眼福!…ちゅうちゅうたこかいなぁ?

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地下鉄から歌舞伎座のまん前に出る階段に差し掛かったところで 思わず う と怯む。上から濃厚な各ブランドまざこざになった脂粉の香りが 熱と圧力を持って降りてきたからだ。見上げると 今まさに 午前の部がハネたらしく ご婦人方の集団が狭い地下鉄への入り口に移動中でちょっとした動脈硬化状態になっていた。
逆流する血栓よろしく地上へ出たら 開場を待つ第二弾が。やはりすごい人気なんだなぁ 歌舞伎って。

本日の というか 10月の演目は モノシラズな私でも知っている『牡丹燈篭』と踊りが『奴道成寺』。
お寺さんで高らかに拍手を叩きそうになろうが、線香からあがる炎をぷうぷうと吹き消そうが、歌舞伎とをどりに関してはクララの方が数段詳しい。通し狂言とは何か、とかダレソレは舞い巧者なのだとか、ドレソレはどうだとか、彼女の講釈を半分わからずに聴いていて、『奴道成寺』では、珍しい常磐津と長唄の掛け合いなんだよ、と言われて「ええ、どっちが常磐津なんだ?」と訊きかえす始末。お恥ずかしい限り。

舞いに関しては、すごいな、とは思ったものの、舞よりもお囃子のほうに注意が行ってしまうし、(三味線のトップの人が他の人よりほんの少し高めにチューニングされていたのはわざとなのか、それともオンチなのかどっちなんだろう?)終わった後、クララが「超人的に上手い!」と頬を上気させていた感動は、口惜しいけれど私には味わえなかった。
だけれども、狂言のほうは、素人の私でもトリハダがたつほど「芸」の凄さを見せ付けられた気がして、本当に面白かった。玉三郎と仁左衛門のやりとりの上手いこと、特に玉三郎の凄いこと。
玉三郎といえば、白塗りのお姫様というイメージがあったし、(ついでにいうと、玉三郎を観ていると、似ているわけではないのにどうしてか祖母を連想します) 仁左衛門といったら、もう二枚目なわけだしえぇ?お露(化けて出るお嬢様)と新三郎(取り殺されるぼんぼん)じゃないのぉ? と思ってたら、天下の玉三郎が貧乏長屋のオバちゃんで白塗りなしで登場したのでかなりびっくり。そして、その立ち居振舞い、所作が、ごくごく自然に本当に貧乏長屋のおかみさんなので恐れ入ってしまった。他に出てくる女形の役者は、皆どこかゲイバーのママっぽくてエグかったり、ところどころ化けの皮が剥がれて「おじさん」になっちゃったりして興ざめするのに、玉三郎ときたら、化けたまま、貧乏をグチる姿も、亭主にきいきい文句をいう姿も 化けたまま。そして、暮らし振りがよくなって再度登場したときには商人のおかみさんとして、ちょっと品よくなって白塗りで、地味な着物だけれど、おお、と会場からざわめきが立ち上ったほどの美しさ。
もうひとり、女形で驚いたのは、お露お嬢様のめのとで、焦れ死んだお嬢様の後を追って、死して後もお嬢様に付き添っているお米役の吉之丞だった。生きているときと、死んだ後とを、立ち姿だけで演じわける。なんてことのないような演技にみえるけれど、若手俳優にはまだそれができないのが、残酷なぐらいよく判る。隣で立っているお嬢様は、ただ棒立ちしてる男にしか見えないのだもの。(棒立ちしているのではないのだろうけれど。)こと、芸の世界では「若さ」すら無力なこともいろいろとあるのだなぁ と本当に舌を巻いた。
そりゃまぁ、どこからみてもでっぷりたっぷりした姐さんを、「年の頃は27」とか言われると「どこがじゃー!」とつっこみたくなったりすることはあっても(玉三郎にはそれすらもない。後ろ姿まで柳腰で華奢に見える。玉三郎自身、女形にしては長身だそうだけれど、それすらも感じさせない。小腰をかがめて演技しているのだろうか。凄すぎる)やはりベテランは格段にうまい。残酷なぐらいヘタクソはヘタクソ。
牡丹燈篭は、もとは落語の怪談で、おそらく当時はかなりどろどろしたコワーいハナシだったのではないかと思うけれど、(でも毎回、こりゃ新三郎が悪いよなぁ と思ってしまう。バケモノだと判ったからといって、周囲に勧められたからといって、お札を貼って保身なんぞ図るからいけない。取り殺されてやりゃいいじゃないか って)台詞まわしもかなり意識的に現代口語に変えてあるのだろうか、随所に笑える箇所もある。意外だったのは、かなり大胆な濡れ場があったりして、「いいのかな、歌舞伎でここまでやって…?」とも思ったが、時代が変われば演出も変わるのは当たり前のことなんだろうな。いわゆる大仰なケレン味も、ほどよく残してあるという感じ。
幽霊と取引して手に入れた100両を、玉三郎が、あわあわしながらおかしな手つきで「ち、…ちゅう…ちゅう   たこ… かい なぁ!」といいつつ小判をぞえるくだり、なんでココでちゅうちゅうたこかいなぁなんだ? とゲラゲラ笑いながら思ったけど、後で調べたら「ちゅうちゅうたこかいな」というのはレッキとした江戸元禄時代にうまれた双六で使った言葉だったと知って驚いた。そういう言葉がもう殆ど死語だとしても私の世代まで伝わっていたことにも。
しかし、思ってたより、歌舞伎って面白い これから時々観たいな。

最後に舞巧者としてクララ御贔屓の愛之助が踊りながら手ぬぐいを投げたのを見て、クララ決然とそのアタリの席を指し、「今度はあそこに着物着て座る!」
え…じゃぁ 私は着付け教室に行かないと…。着物は実家にあるけど小物がないし…。

そういえば、我が亡父は 幼少の頃、歌舞伎役者に養子に欲しいといわれたことがあったらしい。祖母が断固として断ったらしいけど、もし、父が梨園に入って役者になっていたら、今ごろ私は、日々歌舞伎座で歌舞伎を観ていられたんだろうか。(違)
ナントカ屋! とか父に声がかかったりして?
うわー そしたら玉三郎にもまじかで会えたのかも(違違違)
…というか、「私」は生まれてなかったか。ち。
by kyoko_fiddler | 2007-10-11 22:12 | Reviewなど


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